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窓際
冬。
雨の昼下がり。
男はカフェの窓際の席でコーヒーを飲んでいる。
ayoan
カフェ内はあたたかく、外気との温度差で窓ガラスが曇っていて雨で水滴もついている。
ayoan
さっきから、おそらく男が席に座る前から、曇った窓越しの外に同じ人影がずっと立っているのに男は気づいた。
ayoan
一度気になると意識を外せなくなる。
窓の曇りは濃く正面なのか後ろ姿なのか男か女かさえわからない。
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男は窓についた水滴をテーブルに備え置かれている紙ナプキンで拭いて外の様子を眺める。
雨が降り続いていて外は至極寒い。
外に立っている人はコートのポケットに手を入れていて寒さを凌いでいるようだった。
ayoan
その影は誰にも気づかれない様に世界に何かを訴えているかの様に陰鬱にたたずんでいる。
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ガラス窓がまた曇る。
曇っては拭きを繰り返すカフェに座る男
男は影をしばらく観察していたが、動く気配が依然とない。
しばらくすると雨はポツポツと弱くなり雲間からの太陽が現れる。
雲の隙間から覗く太陽の光は影をスポットライトのように照らしている。
ayoan
その光とシルエットに男の全身は鳥肌が立った。
男は直感的に思う。「Jesus」
ayoan
影は眩しそうな顔をして太陽を見つめている。
ayoan
男にはその光はその影のために注がれているのだとはっきりとわかった。
ayoan
光で照らされると影の身体を覆っていた殻がパラパラと剥がれていった。
ayoan
影姿が殻が剥がれるにつれ光の中に浮かび上がってくる。
剥がれた殻は地面に落ちる前に光になって消えて行く。
光の中に真っ黒な体毛の大きな類人猿が立っていた。
ayoan