タイトル一覧
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物語についての考察
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Piece
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記憶
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投稿つむぎ
今回のメモリも良い値だった。
男には少年時代も愛した女ももうなかった。
記憶
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年をとった男が釣り竿を構えて水面をぼんやりと眺めている。
老人と少年
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店の脇にあるゴミ袋の所に一匹のカラスが飛んできてゴミ袋を2、3回突く。
男はカラスってデカイなと思いカラスを眺めながら缶コーヒーを飲み干して
空き缶をカラスがついばんでいるゴミ袋に向かって投げる。
缶が転がる音が響く。
カラスは動じずに男の方を見てカァーーと叫んでから飛んで行った。
街頭の男
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この前買ったメモリはsexばかりで情緒が無かった、女も口が悪いし何より太り過ぎだった。
やはり安物はいけない。
男は頭をバリバリとかきながらにぎやかな街に入って行く。
記憶
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少し大きな通りに出るといつも通り強烈な腐臭が男を襲う。
道にはいくつもの屍が転がっている。一部白骨化した物、死んだ時の苦しみがまだ分かる表情をした物、子供、犬、、、、。
死者達の道を口笛を吹きながら歩く男。
街頭の男
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部屋。
寝ている男。
テレビには草原の映像。
草原
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流れる水、風。
大小様々な石。
草木。
それらに溶け込んで行く老人の意識。
微かに残っている老人の意識が
「この感覚だ。」
と呟く。
老人と少年
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環街(死街は都市の中央部にある)の皆は死街の話も避けようとするし誰も行こうとはしない。
以前は自分もそうだったがいつ頃からか時間があるとこの街にきている。
街頭の男
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ふと路地に目をやって男は何か変な感じがした。
この路地は知っている。自分の記憶なのかメモリの記憶のバグなのか判断がつかない。
この症状は初めてだった。
記憶
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しばらく進むと、先の方にランニングをしている男がみえてくる。
ライダーとランナー
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キャンバスにのる色たちが囁き合って光を運ぶ。
キャンバスの世界
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女は珍しくとにかく呑みたい気分になった。
コンビニでビールでも買って家で飲むかと思っていた時、路地の奥に提灯が見える。
こんな所にお店あったんだと思い近づいてみるとにのれんに蟋蟀と書いてある。
なんと読むのか、まあ電気はついている、ここなら知り合いに会うこともなさそうだ。
のれんをくぐる女。
コオロギ
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どうせ夢なら飛び込んでみようと、毎回思うがなかなか勇気が出ない男。
穴
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部屋で寝ている男は草原の映像を見ている。
風になびいている草を撫でるように触る男の手。
草原
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男はふと違和感を感じて立ち止まった。
そして一体の死体から目が話せなくなった。
その死体は若い女で壁に背中をつけて座っている。
青白く血は通っていないけれどとても穏やかでいまにも目を開けそうな表情をしている。
男は女の死体に近づいて行く。
全然知らない女だと男はわかっているがまるで家族か恋人の様にその死体を見てしまう。
死街の遺体からの窃盗は死罪。
わかっているが体が動く。
女の上着を調べ始める男。
街頭の男
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魚が餌に食いついて糸が竿をビクビクと揺らしている。
少し腕に力をいれて竿を持ち上げれば釣ることが出来ると老人はわかっていた。
しかし腕は動かずに魚は糸を切って川底に潜っていく。
老人と少年
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グライダーのコックピットの中。
いくつもの計器や機器がありパイロットが操縦桿を握っている。
窓の外には広い空と大地が広がっている。空に一羽の鷹が浮いている。
晴天の鷹
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ギュゥギュゥと雪を踏む音。
歳をとった男が広い雪の積もった墓地を歩いている。
手には紙袋を持っていて紙袋の頭からパイナップルの硬い葉が出ている。
墓を参る老人
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少女は手に持った本をゆっくりと開いてブツブツと読み始める。
風がグゥーとうなり、雲が切れて月明かりが少女の髪を輝かす。
草原
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男はハッとして目を覚まし上半身をグッと起こす。
耳元に残る少女の声と息使いに困惑しながら周りを確かめるが部屋には誰も居ない。
テレビには草原の映像が映し出されている。
草原
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人を見るのはいつぶりかな?と思う自転車を漕ぎながら思う男。
いつから自転車に乗って移動しているのか。
どこに向かっているのか思い出せない自分に気がつく。
ライダーとランナー
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カリンの実が土に落ちる。
果実はとろけて金色の甘い香りが立ち昇る。
タネから芽が出て根は地中へ茎葉は空に伸びて行く。
キャンバスの世界
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鏡の中の自分が話しかけてくる。
「おはよう。今日は何をするの?」
仕事を辞めてから2週間が経っている。
女と鏡
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草原に広がっていた光は収縮しながら少女を丸く囲うように円に留まり、凝縮された光は少女の姿を塗りつぶすほどに白く輝いた。
草原
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古いものや異国のもの顔写真が載っているもの。
いろんな身分証を男は慎重に見てから女の顔を観察して見た。
女の首元にあった赤黒い痣が男の遠い記憶に引っかかった。
街頭の男
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確実にゆっくりと流れて行く水の動きを、糸を通して指に感じる老人。
途切れることの無いこの感覚に長く生きてきたんだなという実感を思い知らされて老人は軽く溜息をついた。
老人と少年
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フェレットは女を追いかけて寝室を出ようとするが目の前でパタンとドアが閉まる。
早足で歩く女の足音を追いかけながらドアを見つめるフェレット。
寝室
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パイロットは鷹を見た。
{あいつの様に上昇気流を掴むんだ}そう自分に言い聞かせながら操縦桿をぐっと握る。
しかし鷹を見る視線はだんだん上がっていき、ついに鷹を見失う。
晴天の鷹
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走っている男は少し前を走っている自転車に乗っている男の背中を見て、どうしたものかと思う。
明らかに自転車の男は自分の走るペースに合わせて自転車を漕いでいる。
走るペースをあげて自転車に近づいていく。
ライダーとランナー
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途端穴が小さくなっていく。
男は安堵する。
大きかった穴が小さくなるにつれその深さも増している。
それがわかる。
細く深く、その圧倒的頼りなさが男を締め付ける。
どんどん小さくなっていく穴。
心臓を掴まれている様な不安感が男を支配する。
穴
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男はしばらく『forbidden』の文字を見つめている。
紙袋からパイナップルを取り出して干からびたパイナップルの隣に雪に刺す様におく。
男はパイナップルたちを眺めて口角を上げてニヤリと笑う。
墓を参る老人
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両親の深刻な顔、隔離された祖父母の肌に浮かぶ無数の赤黒い痣、防護スーツを着た医師達。
幼い頃の断片的な記憶に男はぞっとして女の前から2、3歩退いた。
街頭の男
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ゲートの方を見てギョッとする男。
警備官が二人立っている。
いつもなら問題ない。今は封筒を持っている。
街頭の男
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大地は次第に水気をなくし葉に光を遮断され陰り、小さな植物たちは枯れ灰色に染まる。
キャンバスの世界
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病院のベットの上で目を覚ます男。
体が痺れてうまく動かない。
また夢を見た気がする。
相変わらず嫌な匂いの病室だなと男は思う。
穴
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部屋を見渡す女。
この2週間で徹底的に掃除をした甲斐があって無駄なもの一つホコリ一つ無くなった。
「今日は何をするの?」
何もしたくなくなって始めたこの生活なのだが毎日忙しい。
女と鏡
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一度気になると意識を外せなくなる。
窓の曇りは濃く正面なのか後ろ姿なのか男か女かさえわからない。
窓際
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石を投げて水面に落ちる石を見届けてまた石を拾う。
それを繰り返している少年。
老人と少年
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力を抜いて操縦桿から手を離して遠くにみえる大きな雲を見つめる。
グライダーはゆっくりと滑る様に進んでいく。
晴天の鷹
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走っている男は自転車の男に追いつこうとペースを乱したためか、急激に疲れを感じて走れなくなりついには立ち止まってしまう。
自転車に乗っている男は一度走っている男に合わせたペースから抜け出せず、ついには自転車を降りて立ち止まってしまう。
両手を足の両ひざにつき下を向いている走っていた男。
片手で自転車を支えて上を見上げている自転車の男。
こんなはずではなかったのにな。
ライダーとランナー
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墓の入り口で若い女が立っている。
男がやって来て立ち止まって女を見下ろす。女はずっと墓の方を見ている。
男は懐から萎びたパイナップルを取り出すと女に差し出す。
女は両手で萎びたパイナップルをすくう様に手に取ると無表情のまま涙を流す。
男は深いシワをさらに歪ませながら「クックック」と笑いをこぼした。
墓を参る老人
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この封筒をどうする?
事は重大だ。
男は考えを巡らせる。
捨ててはダメだ。
捨てた事実が自分の中に残る、それがまずい。
戻そう、戻せば盗んだという事が自分の中から消える。
とりあえずそれで切り抜けれる。
男は深呼吸をして監視員の視界に入らない道を選んで戻って行く。
街頭の男
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だから名前に対しての憧れがある。飼われている犬や猫ハムスターにまで嫉妬する程に。
プリンセスハーモニー
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最初はペルーに行ってアヤワスカを体験しようと思っていた。宇宙の真理に触れる、死界の門を開く。そんなスピリチュアルな体験が出来ると聞いていたのだがペルーまで行くのに尻込みしていた。
そんな時に聞いたのがバーティカルアチャチャイ。流石インド人のネーミングセンスだなと思っていたがつけたのはカナダ人の学者らしい。
バーティカルアチャチャイ
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文章の下書きや原案の事を'草案'と言うのも草原さんの草からきている事はあまり知られていない。
草原
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なるほど人間の発展という歴史はただただ堕落の道だったという結論に私は到達してしまった。
言葉のカトリック
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ヨーロッパ人がこの土地を見つける200年ほど前。
つむげ戦士の我ら
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そんな風に無邪気に思っていた頃が懐かしい。
令和元年7月29日、怪獣が現れたらしい。
令和の怪獣
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神様は悩んでいた。
どうもドスもコイも好きになれない。
どすこいマガジン
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これは仕方のない事なのか。
気づく事でその矛盾が生まれるのだから。その気づくための自我が堕落を生むのだから。
言葉のカトリック
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朝の体温の確認、朝食、医者の検診、昼食、病室に出入りする人間、入浴、夕食、体温の確認。
自分が時間の檻に閉じ込められたかの様に外の時間は倍速で動いている。
それは一瞬とも永遠とも思える。
ふと今はいつでここはどこかわからなくなる感覚が男を包む。
穴
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鏡の中の自分はその問いに不快な顔をした。
仕事もやめた、何もうまない人間関係も切った。
のに、何も抜け出せていない。
女と鏡
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その影は誰にも気づかれない様に世界に何かを訴えているかの様に陰鬱にたたずんでいる。
窓際
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少年は目が回って立っていられなくなる。
手と膝をつき息を切らす。
額からじっとりと粘っこい汗が垂れてくる。
夕暮れ
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居留夏はそれ程に美しい女だ。
居留夏
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同じ死体に二度会えない。
そんな話を前に聞いた気がする。
死街の都市伝説的な話にその時は特に何も思わなかった。
もう一度周りを見渡す。確かに、多分ここだった。
周りの遺体も見覚えは特にないというよりあの時は注目して居なかった。
街頭の男
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コンクリートのビルとアスファルトで覆われ無数の色で装飾された街。
整列した混沌に従って道を歩く人々。
草の匂いが混じった風がその男だけを立ち止まらせた。
草原
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色が少し黒くなった水面に石を投げたあとまた次の投げる石を探しながら河原を歩く少年。
ふと足下の方をみると、灰色の丸い石たちに混じって一つの白い石を見つける。
立ち止まって白い石を拾いしばらく眺める。
少年は少し迷ったけれどその石を川に投げて暗くなってきた河原を走って行く。
老人と少年
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無線で着陸地点を報告して旋回しながら高度を下げていく。
大地と空が少し傾き滑らかにスライドする。
男はやはりここが好きだ、と思う。
晴天の鷹
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徐々にペースを上げていく走っている男。
道はずっと真っ直ぐ視界を左右に割って続いている。
しばらく走っていると男は一人で走っているのに気がつく。
ライダーとランナー
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二人が去った後の地面の雪には小さな靴が歩いた跡だけが残っていた。
墓を参る老人
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便座に座ってじっと壁紙を見つめる。
凹凸のある幾何学模様が広がっていた。
こんな壁紙だったんだと女は思う。
タイムリミット
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光に飛び込み身を焼く虫。
絶望と憧れの輪郭を溶かすこの強い光の中で白い盲目の瞳に何がつかめるか。
目を閉じる時だ。閉じなければ目覚めもない。
言葉のカトリック
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地球に近づいた月は夜空を紅く染めて暗闇を失った動植物は進化か絶滅をよぎなくされた。
人生の大半を混乱の中に生きてきた私には懐かしむ過去はなかった。
年々重くなっていく鉄傘だけが私に生を実感させる。
軌跡の奇蹟
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事の始まりは海面の低下だった。
温暖化で海面上昇が騒がれる中での出来事に学者達は頭をひねっていろいろな仮説を打ち立てた。
その後すぐに太平洋に塩の島が現れた。
海底にいる何かが海水を塩と酸素に分離しながら成長していると噂が出回った。
海はどんどん遠のいて行く。
先日買ったばかりの海水パンツは乾いたままだ。
令和の怪獣
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2日目。
肛門が痛くて昨日は全然眠れなかった。
タイムリミット
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ただしその選択は死を忌むべきものとし、恐怖を煽り堕落への道を先導する行為に他ならない。
こうしてまた私は言葉の迷路に迷い込む。
言葉のカトリック
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LUNATIC DAWNと大きくそのゲーム名とモンスター達が書かれたTシャツを得意げに着ている弟が一緒に月のかけらを探してくれとせがんでくる。
少し前はよく転がっていたのだが最近はなかなか目にしないそれこそいいモンスターの出る大きめのかけらなんてのはまず見つかるもんじゃない。
軌跡の奇蹟
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国と言っても国民42人だけでみんなの顔と名前を知っている。
プリンセスハーモニー
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昔々ある所に
昔々の話
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おじいさんとおばあさんが住んでいました。
昔々の話
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何がこの記憶を呼び起こしたのか。
忘れていた。老人はその事に驚いた。
あの南極の時。
老人と少年
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私は居留夏を知っている。
居留夏
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ベンジャミンの異様なテンションの高さに戸惑った。一瞬誰だかわからなないぐらいに。
このオフィスで働いて10年が過ぎるが彼のこんな笑顔を見たことがなかった。
カジキマグロとベンジャミン
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しかしそのベンジャミンの変化よりも異常なものがベンジャミンの隣でこっちを見ている。
カジキマグロの頭を持った大きな人間。
被り物とは一見にして違う本物のカジキマグロの頭。
長い剣のような鼻先の奥の大きな両目と目があっている。
カジキマグロとベンジャミン
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混乱している私にベンジャミンが楽しそうに繰り返す。
「さあ始めるよ!」
カジキマグロが口をパクパクさせながら
「はじまるぅーはじまるぅー」
とはしゃいでいる。
さあどうしたものか。
カジキマグロとベンジャミン
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しかし神様は悩むのはやめた。
私は神だ。神が悩んでても何も始まらない。
神様はドスとコイを呼び出してこう言った。
「ドス、コイ、私はあなた達がどうも好きになれないの。その理由を探してきておくれ。」
どすこいマガジン
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ドスとコイは寂しそうに神様を見上げている。
神様は続けて言った。
「しかしだドス、コイ。私はあなた達を愛しているのだよ。神は自分が創った命全てを愛する。それだけは忘れてはいけないよ。さあ行っておいで。きっと理由を見つけてきておくれ。」
そう神様が言い終わった瞬間ドスとコイは今まで感じた事のない身体の重みを感じて落ちて行った。
どすこいマガジン
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気がつくとドスとコイは地上にいた。
そして天界での事は何一つ覚えていなかった。
ただひとつ信じている事がある。私たちは神に愛されている。
どすこいマガジン
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明るいオレンジの膜の中 光が透けて浮遊している。
細長い細胞の連なりが触れようとすると逃げてしまうアメンボのように無駄のない動きで浮いている。
Piece
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少年が目を開ける。
両方の手を軽く握ってのばした足のももの上に置いた状態で座っている。
古く、汚れで浸食された無地のパズルが少年の座っている所を半円に囲うように敷かれている。
少年が自分の体の機能を確かめるようにゆっくりと起き上がる。辺りは目を覆いたくなるような広大な空間を持つ平の大地が広がっている。
Piece
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少年はゆっくりと立ち上がる。パラパラっとパズルの"台座"が崩れ落ちる。
視界の果てまで広がる大地を無心で見つめている少年。
Piece
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立っている少年の背中を風が大きくゆっくりと押す。一つのパズルのピースが風に乗って少年の足元を通り過ぎて地面に転がり倒れて止まる。
少年の立っている周りの地面に古いパズルのピースが点々と落ちている。少年は視線を下にやりその落ちているピースを見る。自分の足元にパズルが敷かれている事に気づく。
Piece
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振り向いて自分が座っていた所がパズルに囲まれて”台座”の様になっている。膝をついて自分の背がもたれていた部分の汚れたパズルを手で擦ってみるとその部分だけ新品のように真っ白に光を取り戻す。少年は嬉しくなってパズルをきれいにしようと手で擦っていると擦った力でパズルに穴があいてしまう。少年「あっ、、、、」穴を見つめる少年。
Piece
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立ち上がって”台座”を見る少年。パズルの台座は岩を覆うようになっていて岩の全面(少年が座っていた方)は覆われているが後面は下の方が少し残っているだけでほとんど岩がむき出しになっている。パズルの端のピースが風に吹かれて落ちる。”台座”を見つめる少年。
Piece
t2
ゆっくりと顔を上げて改めてあたりを見渡す少年。
一面の赤茶色の大地の奥に白い山の影が点々と見えてくる。広大な大地を感じて少年の息遣いが少し荒くなる。
遠くに薄く見える山々の影。少年は一番大きな影を見定める。
見つけた山の影の方向へ歩き出す少年。赤茶色の大地は堅く頼もしく少年の足をささえている。
Piece
t2
一歩一歩足を動かすごとにこの広大な大地を自分が動かしているという想像と同時に自分がまさに歩いている感覚を楽しむ少年。
それによってどこまでも行けるという可能性を確信しながら歩いて行く。
振り返る事立ち止まる事その概念を感じさせないただ歩くという行為。
Piece
t2
目指している山の形は少しも変わらない。
歩いていく少年。
視線はずっと山の影。
時間の感覚、距離の感覚はわからないに等しい、それでも少年は少年の中で大きな時空の中を歩いてきた様に感じ始めている。
それでも何も変わろうとしない赤茶の大地と白い山の影。
ついさっき(といってもどのくらい前なのかはわからない)までの自分の可能性と見えているはずの物やそれをとらえている自分の目までも疑いたくなるほどの現実感。
Piece
t2
それでも歩く事を止めない少年。
今少年に出来る事はそれだけで歩くのを止める事に何の意味も持たない事を少年は無意識下でわかっているのだ。
Piece
t2
少年が歩いていると遠くの地面に何かが見えてきた。
一面の赤茶色の大地に黄色シミのようなところが薄く見える。
少年の歩くスピードは変わらないが、大きく遠い目標の前に小さくすぐ手に届く目標が現れた事で自分の中の不安が打ち消されたようにしっかりと歩いていく。
だんだんと黄色いシミが大きくなってくる。黄色いシミを見ながら歩いていく少年。シミの輪郭がはっきりしてく
る。
少年「(砂だ。)」
Piece
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黄色い細かな粒子の砂が小さな一角に散らばっている。
ほとんどが風で流された様になっているが小さな山になっている所もある。
少年は砂の一角まで来て立ち止まる。弱い風が吹いて砂の山を少しずつ削っていく。
Piece
t2
少年はしゃがんで砂を指で触ってみる。少年の表情が少し緩む。
さらさらと滑らかな砂。両手ですくってみる。指が砂の中に入ったときの何ともいえない安心感。
熱だけではない温もりと一定の形として保たれない砂の集合体に入っていく感覚、しっかりとした重量感。
指の隙間から透き通る様にこぼれ落ちて風に奪われていく。
Piece
t2
少年はとても優しい顔になって手の中の砂を見つめている。
砂をすくってこぼれ落ちる。その心地よい動作を楽しんでいる少年。両手の器の中の砂がなくなってはすくう。それを繰り返す。
手の中の砂が半分ぐらいになったとき砂の中から白い欠片が表れてきた。少年は手に力を入れて指のすき間を閉じる。砂がこぼれなくなる。
Piece
t2
手の中の砂をゆっくり揺らすと白い欠片が浮き出てきた。
真っ白いパズルの一つのピース。
少年はハッとして手のひらの中の砂の上のピースを見る。
砂の中から出てきた驚きと何か宝物を見つけたような喜びで嬉しそうな少年。
Piece
t2
このピースは今自分が発見した。
この広大な大地の中の小さな砂の集まりの中にあった一つのピース。
自分がここで見つけなかったら永遠に砂の中にあったのかもしれないと思うと少年はドキドキしてすぐにこのピースが気に入った。
Piece
t2
ピースを落とさない様に砂をゆっくり手の器からこぼしてピースをつまんでまじまじと見つめる。
ピースの表面を親指でさする。スベスベしている。
そのまま立ち上がって少し迷うがニッコリ笑ってそのピースをズボンのポケットに入れる少年。
ポケットをそっとおさえて砂を見下ろす少年。
Piece
t2
砂の山は少年が来たときよりだいぶ平たくなっている。
風が砂をちらかす。砂を見つめる少年。
視線を上げて遥か遠い山の影を確認する。
歩き出す少年。
Piece
t2
この生活が悪いとは思わないが良いとも思えてはいない。
さて今日は何をしようかと考えてそのまままた昼寝の続きに入っていく。
モラトリアム
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ちゃんと考えた事なかったけど物語って何なんだろう?
物語についての考察
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竹取物語ってかぐや姫だよね。竹から姫出てきて月に帰るって。不思議な話だよな。
物語についての考察
t2
神話ってイメージはそんなに無いんだけどそっちに近い気がするな。
単純に面白いと思うんだけど具体的に何が面白いんだろうな?
物語についての考察
t2
どう解釈するかだけど例えばかぐや姫が神様で美しさという餌を使って人の欲を見て帰っていったみたいな話にも思えるね。
色々な解釈が出来るって事が物語の一つの魅力だなと思う。
ドラマっていうのは物語を考える事において重要な事だと思うね。
物語についての考察
t2
竹取物語はいい例で長い間色んな時代超えて残ってきてるものは普遍的な面白さを持っているんだろうね。
物語についての考察
t2
多分だけど長く受け入れられてきたものが結果として普遍的なものとして今も親しまれてるんじゃ無いかな?
そういう意味でこれは物語に限らずだけど表現って物が人の感性を築いていく感じがするな。
物語についての考察
t2
竹取物語でいうとだけど竹と美しい女性と月ってキーになる物がどの時代にもあって想像しやすいよね。
例えば竹林を見て綺麗だなと思う気持ちをそのまま竹取物語にぶつけられる。
そういう個人の気持ちは大事だよね。
物語についての考察
t2
そのキャラクターがそのまま竹や月を連想させ事が親しみに繋がってるんじゃ無いかな?
竹藪の中で髪の長い女性が立っていて空に月がある絵があったらかぐや姫を連想してしまうじゃない?
桃太郎の桃浦島太郎の亀とかまあいいキャラクターってのは連想できる何か持っているよね。
物語についての考察
t2
普遍性が有るんじゃなくて普遍性になるって考え方でいくとそうなるかな。
これは単にその物語がって事だけじゃなくて複合的に当たりつづけているって考えもできるね。
物語についての考察
t2
時代もにも物語にもたくさんの要素があってそれが噛み合い続けているみたいな事かな。
物語についての考察
t2
まず物語とストーリーってのは同じようだけれども意味合いは違うんじゃないかと思うんだけどそこどう思う?
物語についての考察
t2
ストーリーっていわゆる起承転結って物で物語はもっと細かく広くも心情を伝える物な感じがするね。
物語についての考察
t2
確かに物語って単語はあまり使わないね。ドラマがあるとかセリフっぽいとか同じような意味合いで言われる事はあるけど物語って言わないな。
そういう意味でも物語は掴みづらい言葉なのかもしれないな。
物語についての考察
t2
竹取物語の面白さってなんだと思う?
物語についての考察
t2
祖父が子供の頃に世界的に流行した角膜ヘルペス。
視覚を失うのを防いだワクチンは後遺症として人類から色を奪った。
空は青かった
t2
絵描きだった祖父の話が私は好きだった。
空は青かった
t2
使われなくなった祖父のアトリエに並べられた明暗だけで描かれている絵画たちを眺めながら祖父の見ていた色のある世界を想う。
空は青かった
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父も母も失色児として産まれたので色を知る肉親は祖父だけだったので祖父から色について沢山話を聞いた。
色の話を私にする祖父を母は良く思っておらずいつも二人で母に怒られていた。母が去ると祖父は私にニッコリ笑いかけまた何がどんな色なのか色を知らない私にわかり易いように話してくれた。
空は青かった
t2
アトリエの絵画たちの中に祖父が私の為に描いてくれた絵が沢山ある。
アトリエから見える風景の絵や私の顔の絵がほとんどでその絵には対象物の部分部分に細かい文字で何色かが書かれている。
空は青かった
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祖父の机の上に置いてある安物のCDプレーヤーを再生させていつも祖父が聞いていた曲を流す。
I see trees of green, red roses too
I see them bloom for me and you
And I think to myself, “What a wonderful world”
祖父が亡くなって簡素な通夜と葬式を終えてから1週間ぐらい経つが実感も持てずフワフワとしていた感情がグッと張り詰めて胸を締め付ける。
空は青かった
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