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夕暮れ
あれ?今日は鐘が鳴らないぞ。と少年は思った。
いつも夕方の5時から5時半まで町のおじさんが5分おきぐらいに神社の鐘を鳴らす。
神社の前で走っていた足を止めて除く神社につづく階段を見上げる。
空の雲はオレンジ色に染まり、階段の側面にある街灯にもボワっとした明かりが灯っている。
ayoan
少年は腕時計をみて5時を回っていることを確認した。
不思議に思って少年は階段を登って行く。
しかし、登っても登っても階段は続いて行く。
腕時計の秒針は止まっていた。
ayoan
少年の靴が階段の上の砂を擦る。
その音が異常に大きく聞こえる。
階段の脇に沿って生える大きな幹の木々が青黒くオレンジ色の空まで伸びている。
ayoan
階段は流曲に歪み出し、少年の頭上に伸びていった。
あたりはオレンジ色で、あっちにもこっちにも階段が伸びている。
空間が歪んで目が回った少年は、もはや上りと下りの判断がつかなくなった。
ayoan
少年は目が回って立っていられなくなる。
手と膝をつき息を切らす。
額からじっとりと粘っこい汗が垂れてくる。
t2
状況を掴めないまま、少年は恐怖に襲われる。
汗が止まらない。下を向いたまま、恐怖と不安から頭が割れるほどの頭痛が始まる。
cory
少しづつ息が整ってくる。
汗で背中に張り付いたTシャツが体を冷やす。
顔を上げると少年は階段を登りきった鳥居の下に居た。
真っ赤な鳥居は少年を監視する様に立っている。
ayoan
壮大な鳥居の気迫に押された少年は怯えた気持ちを覚えくぐる気がしなかった。
どこか異次元へ行って戻れなくなるような予感がした。
登ってきた階段は無くなっていた。
ayoan
今上がってきた階段のあったはずのところには木々たちが昔からずっとある様に当たり前に生えていた。
町の灯がいつもよりずっと遠くに木々達の間からチラチラと光っているのが見える。
少年は鳥居に向き直りソロソロと鳥居をくぐる。
ayoan
鳥居をくぐると、突然風が強まり木々達は急速に大きくなり空が見えなくなるまで囲む様に少年の頭上を覆った。
ayoan